Never Forget You
いよいよ。

コース上で名前が呼ばれ、そーちゃんは手を振る。

今回は何と、ポールポジション。

予選1位。



私がそーちゃんに出会った頃は。

こんな事は想像出来なかった。

全日本に出るくらいだから速いし、上手い。

けど…

常に真ん中、もしくは下位争いにいる人で。

目立つ人ではなかった。

こういう舞台に立つのを間近で見ると、本当に、私が知っているそーちゃんなのかな、って思ってしまったり。



…でも。

パラソルを持ちながらチラッと隣を見ると。

やっぱり、私がよく知っているそーちゃん。

顔色一つ変えずに、真っすぐ向いている。

本当に怖いくらい落ち着いている。



「そーちゃん!」

私がピットへ戻る前に、思わず声をかけた。

そーちゃんはゆっくりこちらを向く。

「頑張って!!」

手を挙げると、そーちゃんも軽く手を挙げた。



心臓が高鳴り、私は祈るように手を組んだ。

どうか、怪我をせずに無事に帰ってきますように…
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