green mist      ~あなただから~
 どれくらい経っただろうか? あと、もう少しでなんとかまとまりそうだ。コーヒーを入れるためにリビングのドアを開けた。

「あっ。お疲れ様です」

「まだ、起きていたの?」


「ええ。テレビを見たかったので。コーヒー入れましょうか? 私も、何か飲みたいと思っていたので用意しますね」

 時計は、十二時を過ぎている。俺はコーヒーを飲みたそうな顔をしていたのだろうか?


「ああ、ありがとう……」

 彼女は、手際よく俺のコーヒーと、自分のホットミルクを用意してテーブルに置いた。

 ソファーに座って並んでカップを手にした。


「素敵なキッチンですね。飲み物用意するだけでもわくわくします」

「そうかな? 俺はあまり使わないからな。お風呂はどうだった? 困った事は無かった?」


 彼女は俺の渡したTシャツの裾を持ち上げた。

「はい。これもお借りできたので大丈夫です。広くて、気持ち良かったです。疲れが取れました」

 彼女は、満足気な笑みを見せてくれた。俺は、それだけで嬉しくなった。


「それなら良かった。俺も、もう少ししたら、風呂入って寝るから、先に休んで。絶対に、ソファーで寝たらダメだからね」

「ええ……」

「寝室のベッドで寝なさいよ」

 そう言わないと、彼女はソファーで寝るのだろう? 来客用にもう一部屋ある事は、教えなかった……

 やっぱり、そんなに我慢できそうにない…… あまり明日に持ち越さないよう、仕事を片付けよう。


 仕事を終えた時には、外が少し明るくなりかけていた。朝は少しゆっくり出来そうだ。

 シャワーを浴びて寝室に入ると、遠慮がちにベッドの上に寝転ぶ彼女の姿があった。寝るつもりが無かったのだろうか、布団もかけずに、小さくなっている。


 彼女を抱きかかえると、布団の中に入れた。こんな事が出来るのも俺の特権だと思うと、顔がにやけてくる。彼女は気持ちよさそうに、スヤスヤと眠ったままだ。

 俺の横に寝転んでいる、彼女の頬にかかった髪をそっと耳にかけた。

 この穏やかな寝顔をずっと守りたい。その為だったら、なんだってする。
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