たとえ星が降らなくても【奈菜と南雲シリーズ③】
グリルポークが功を奏したのか、眉間の皺が取れた彼女は、今度はパエリアをせっせと口に運び始めた。

体の小さな彼女は、いつ見てもちょこまかと動いている。黒めの大きな瞳は丸く、まるで子リスのようだ。ついつい彼女に食べ物を与えたくなってしまうのは、そのせいだろうか。


木村奈菜(きむらなな)
それが俺の恋人の名前。
三年間の片想いが実った時のことは、まだ記憶に新しい。


同期入社の彼女とは、入社式で出会ってから配属後の今の職場までずっと一緒だ。

配属されて間もない頃。数少ない同期同士、何かあったらすぐにサポートしよう。そう思いながら、小さな体で常にちょこまかと働く彼女のことを見ていた。

彼女にいいところを見せたいという下心。そして彼女を助ける役を他の(ヤツ)に奪われたくないという打算。我ながら可笑しくなるような煩悩を抱えながら彼女を見ていた俺。

だけど彼女は、そんな俺の策略を見事に裏切ってくれたのだ。
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