たとえ星が降らなくても【奈菜と南雲シリーズ③】
「そもそも、別に雨でも関係ないだろうが。雨ってのは、空気中の水蒸気がくっついて落ちてくるもの。だから、雨雲の上の星空はずっと晴れだ」

速度を増している心臓を落ち着かせるため、昔習った理科の知識を引っ張り出してみた。

「もうっ!ロマンの欠片もない!!」

「ロマン、って………」

「もちろん、七夕が好きなのはロマンチックなせいもあるけど、それだけじゃなくて、私のラッキーナンバーが、」

「7、なんだろ?」
「7、なんだもん」

またしても丸い目を見開いた彼女が、俺をじっと見上げてくる。

「だから。何年、」

「三年です!」

間髪入れずに答えを返してくる奈菜に、またしてもぶはっと吹き出す。
こういうところが、たまらなくツボなんだ。

「名前と同じ数字だからって、誕生日でもないのに毎年この日を楽しみにしてるもんな。ハロウィンより盛り上がってるだろ」

笑いながらそう言うと、奈菜がきょとんとした顔で小首を傾げた。

「南雲……私の誕生日、知ってるの?」

しまった、口が滑った。彼女の誕生日を直接聞いたことはない。

「ああ、まあな……毎年本庄(ほんじょう)と騒いでるから、嫌でも耳に入ってくるんだって」

「悪かったわね、うるさくて」

いつも同期の友人と誕生日プレゼントが何が良いかと盛り上がっていることを指摘したせいで、むすっとなった彼女。恨めしそうに下から睨んでくるけど、頼むからその顔はやめて欲しい。
上目遣い子リス可愛すぎる。最強か。

今すぐこの場で抱きしめたい衝動を、ポケットの中で手を握ることで(こら)えた。
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