あと5分!【奈菜と南雲シリーズ④】
たかが『5分』って侮ることなかれ。
その5分早く家を出てたら、宅配便に捕まることもなくて、駅までダッシュするはめにもならなかった。

いや、そもそもあと5分早く起きれていたら。もっと言うと、あと5分早く眠っていればーーー

デートに着ていく服を選んでいたらあっという間に時間が過ぎて、早く寝なきゃって思ってるのに、翌日が楽しみすぎてなかなか寝付けなかった。
結果、寝坊だ。


本当は分かってる。こんな日に寝坊をしてしまった自分が一番悪い。分かっているのに、心の中だけでも誰かに文句を言わないと気が済まなかった。

(仕方ない……南雲に『遅れます』ってメッセージいれなきゃ)

スマホを取り出すために、肩から下げていた籠バッグに手を入れる。

(ん?)

ごそごそと中を漁るけど、いつものあの感触に指が触れない。

(ん、んん………?)

今度はちゃんとバッグを開いて目で見てみた。だけど―――

「な、なーーーいっ!」

駅のホームに私の叫びが響き渡った。

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