冷徹冷酷な極上イケメンは幼なじみを甘く激しく溺愛したい。
掴まれた右腕だけはジンジンと熱くて。
気まずさよりもドキドキが勝ってしまっている。
「あ、あの……」
「とりあえず荷物だけもってこい。話はそれからだ。あと質問したいことはまとめておけ」
「うん、わかった……」
私が声を出したのと同時に伊織が話しかける。それを聞いてドキッとしたけどその言葉で一気に気分が落ち込んだ。
そうだ、咲坂さんのこと何も知らない。
伊織は最初知らないって言ってたけどあんな現場を見てしまったからきっと“何か”あるんだろう。
それを聞くのは怖いけど……確かめないと。
咲坂さんと、伊織の関係を。
「ちょっと待ってね」
「ああ」
私が返事をするとすっと右腕は離れていく。その温もりがなくなって寂しく感じたけど今はそれどころではなかった。
荷物をまとめ、伊織と並んで教室を出る。
放課後の教室はどこか寂しくて、まるで世界の中で伊織と2人きりになった気分だった。