冷徹冷酷な極上イケメンは幼なじみを甘く激しく溺愛したい。
「空音、悪いな。先に帰っててくれ。咲坂を保健室に送ってくる」
伊織は振り返ってそう言うとそそくさと教室から出ていく。
残された私は……何も出来なかった。
「……伊織……なんで、咲坂さんのことを信じるかなぁ……伊織のバカァ……!っ、ヒック」
伊織の出ていったドアを見ながら、涙が溢れた。
朝はあれだけ警戒していたのに。こんなにあっさりと伊織を取られてしまうなんて。自分でも情けないと思う。
こんなことになるんだったら……伊織に気持ちを早く伝えるべきだったんだよ。
なんで……自分の気持ちに素直にならなかったの……。
普段は女子に冷たい伊織。
だけど困っている人がいるとほっとけない優しい伊織。このことは私だけが知っていればいいと思ってたのに。
「伊織なんか……大っ嫌い!」
何もかもが嫌になって思いっきりそう叫んだ。
違う……本当は大好き。ずっと伊織のそばにいたい。
だけど……現実はうまくいかなくて。何もかもが嫌になった。自分の気持ちも、伊織の私に対する気持ちも。