ひなたのわたあめ
今まで見たことないような表情でそんなこと言ってくるから、顔が赤くなってしまい、心臓が早まる。
「え、私助けたことなんてあったっけ?いつ?」
私、綿名に出会ってから助けてもらってばっかりだったと思うんだけど。
「それは秘密!」
と、綿名はいつものクシャっとした笑顔になって言った。
えー、そんなの気になっちゃうよ。
教えてよ、と口を開きかけたけど、すぐに綿名に話しかけられてしまった。
「そういえばさ、3年生を送る会で何か出し物してくれる人、募集してたよね」
いきなり違う話題になったな、と思った。
でも、廊下の壁にポスターが貼ってあるのが目に入って、これを見て言ったのか、と納得した。
「あー、そう言えばそんなのあったね」
「日乃は出ないの?」
綿名はポスターを見ながら言った。
「え?私?いや、ムリムリ。特技とかないし」
こういうの、何かできたら楽しそうだなぁって思うけど、特に披露するものもないしね。
少し前を歩いている綿名は前を向いたまま、「あれ?」と不思議そうな声をあげた。
「でも、日乃、フルート吹けるじゃん」
あー、フルートか、一応吹けるようになってきたけど、大勢の前で吹くのはちょっと…
…
…え?