ひなたのわたあめ


 今まで見たことないような表情でそんなこと言ってくるから、顔が赤くなってしまい、心臓が早まる。



 「え、私助けたことなんてあったっけ?いつ?」



 私、綿名(わたな)に出会ってから助けてもらってばっかりだったと思うんだけど。



 「それは秘密!」



 と、綿名はいつものクシャっとした笑顔になって言った。



 えー、そんなの気になっちゃうよ。


 教えてよ、と口を開きかけたけど、すぐに綿名に話しかけられてしまった。



 「そういえばさ、3年生を送る会で何か出し物してくれる人、募集してたよね」



 いきなり違う話題になったな、と思った。


 でも、廊下の壁にポスターが貼ってあるのが目に入って、これを見て言ったのか、と納得した。



 「あー、そう言えばそんなのあったね」



 「日乃(ひの)は出ないの?」



 綿名はポスターを見ながら言った。



 「え?私?いや、ムリムリ。特技とかないし」



 こういうの、何かできたら楽しそうだなぁって思うけど、特に披露するものもないしね。


 少し前を歩いている綿名は前を向いたまま、「あれ?」と不思議そうな声をあげた。



 「でも、日乃、フルート吹けるじゃん」



 あー、フルートか、一応吹けるようになってきたけど、大勢の前で吹くのはちょっと…







 …え?

< 10 / 12 >

この作品をシェア

pagetop