ひなたのわたあめ
きみのにおい
中学の卒業式に遅れそうだったことも、あの日、白い猫に会ったこともすっかり忘れていた。
「日乃ちゃん、めっちゃギリギリだったよね―」
ミナが笑いながら言う。
あの日卒業式にはなんとか間に合ったのだけど、卒業式が終わってすぐに家に帰り、フルートが入った鞄を担いで白い猫…わたがいたところに行ったが、わたはいなかった。
1時間程周りをウロウロしてわたが来ないか待ったけど、わたは来なかった。
まぁ、猫に言葉が通じる訳ないか。
そう思って1人で家に帰った。
フルートは今でも習っているけど、まだ誰にも聞かせたことがないし、フルートを習っていること自体誰にも言っていない。親友のミナにすら。
なんとなく言うタイミングがなかった。
「あの卒業式からもうすぐで1年かぁ、早いねー」
「そうだね、ほんと早い」
私はミナの言葉に頷いた。
気付けば、あの色々あった卒業式の日から1年が経とうとしていて、桜のつぼみが淡く色付きだしていた。