ポケットにあの日をしまって
3 傷痕

蒼司side もう1人の君

「思春期の子が放射線治療してるのを観てると、こっちまで泣きたい気持ちになるわ」

中間考査が終わって10日ほど過ぎた頃。

姉が医療系のドラマを観ながら染々と言った。

「温存しても放射線を当てた所が黒ずんだり、薬の副作用で爪が変色したり欠けやすくなったり浮腫みが出たり、代謝が不安定になったり」

俺はそれを聞き逃すまいと、身を乗り出していた。

「たしか、うちの病院にも中学生が3月下旬から1ヶ月ほど入院していたかな。彼女、1度も泣かなかったな~。名前の読み方がわからなくて尋ねたのを覚えてる」

「そいつ、小鳥遊茉莉? 俺のクラスなんだ」

姉が不意に「しまった」と呟いて、顔をしかめた。

「連休明けて登校してきたんだ。考査の3日間は休まず出てきたけど、辛そうで」

「ちゃんと労ってあげなさいよ。心身ともに相当、キツイはずだから」

「わかってるさ」
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