ポケットにあの日をしまって
画面いっぱいに映し出された、そこにはもう1人の彼女がいた。

「これが今のわたし」

彼女は画面に映る自分の胸を撫でた。

有るべき場所に有るものがなく、真っ直ぐに1本引かれた傷痕はまだ赤く痛々しかった。

俺は画面から目が離せなかった。

グッと込み上げてくる思いで目頭が熱くなった。

「にしな……くん」

彼女の指が俺の頬に触れ、俺は自分が泣いているのに気づいた。

俺の目から溢れだした涙を彼女の指がそっと撫でた。

「ごめんーー泣きたいのは小鳥遊の方なのに」

彼女が首を横に振った。

「見てもらってよかった……仁科くんに見せてよかった。気味が悪いって、言われたらどうしようかと思った」

「小鳥遊」

「でも……泣いてくれた。ありがとう、ありがとう」

彼女の瞳からつうーと、涙が頬を伝っていく。

「泣いていいよ。思い切り」

嗚咽をこらえ、頬を拭う彼女がいとおしかった。
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