ポケットにあの日をしまって
真面目にラジオ体操をしている姉の様子が浮かんだ。

無気になる姉が可笑しくて「はいはい」と、相づちを打った。

下手にスクワットなどするよりは手頃な筋トレかもしれないなと思った。

「ところで、あの子どうしてる? えっと……小鳥遊さんだっけ?」

「相変わらず調子悪そうなんだよな。元気に見せようとしてるって感じ。それがいじらしくてさ」

「ふーん」

「何!? 意味深だな」

「蒼司、あの子とよく会ってるみたいだし」

「ああ。今日、アドレス交換した」

「深入りしないようにね。話を聞くくらいならいいけど」

「!? どういう意味だよ」

「もし、自分の彼女が何らかの事情で大きな傷痕が残ってしまったとして、その傷痕を見せられたとしたら?」

「ああ。それなら見たよ」

「えーーーっ、見た!? 見たって、そんな仲なの?」

姉が俺のシャツの胸元を掴んで詰め寄った。
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