ポケットにあの日をしまって
「いや……その、写真を見せられた」

「ーー写真」

姉は「はあ」とため息をついた後、シャツの胸元を掴んでいた手を弛めた。

「どういう状況で写真なんか」

「まあ……成り行き。で、さっきの続き」

「彼女の傷痕をまともに、真っ正面から正視できる?」

「はあ? どういう状況だよ。エッチでもしない限りそんな」

「もう。だから、もしそういう仲になったとして、彼女の傷痕を見ながら……だ、抱けるのってことよ」

姉は口ごもりながら、赤面していた。

「わかんねえよ、そんなの。だいたい小鳥遊とはまだそんな仲じゃないし、今日やっとアドレス交換したばっかで」

「頭の隅にでも留めておきなさい。本気になった時のことも……」

「姉ちゃん、考えすぎじゃねえ。傷痕があるからって、彼女が彼女でなくなるわけでもないし、彼女の価値が変わるわけじゃないし」
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