ポケットにあの日をしまって
「蒼司、あんたは考えなさすぎ」

「姉ちゃん。俺さ、小鳥遊に写真見せられた時、綺麗だと思ったんだ。胸が2つ、まだある写真と胸が1つになった写真。俺、両方とも綺麗だと思った」

「ーーー綺麗? 蒼司、あんた図太いね」

「そうか? 俺は……泣きたいのを我慢して笑って、強がってる小鳥遊が素直に泣けたらいいと思ってる。今はそれだけ」

「なにそれ?」

「何って、そういうことだよ」

俺が言うと姉はまた、ため息をついた。

今度はえらく長いため息だった。

お手上げだーーーそんな声がふと、聞こえた気がした。

「姉ちゃん、俺大丈夫だと思う、うん。大丈夫だ」

俺は姉に向かって言いながら、自分自身に言い聞かせていた。

正直、大丈夫だという確かな自信はない。

面と向かって真っ正面から小鳥遊の傷痕を正視する覚悟、そんなものあるはずもない。

そう、ただの強がりを言っただけだ。
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