ポケットにあの日をしまって
その後、県内で中堅チームだったサッカー部は先輩たちの活躍もあり、次の試合は準決勝だ。

雨の中、傘もささずに、小鳥遊を見たあのから、もう1年半も経ったんだなとしみじみ思う。

小鳥遊はずっと抗がん剤を飲みつづけていて、よく体調を崩す。

体育の授業はいつも見学しているようだ。

「体はいいのか? 応援も周りが派手に盛り上がるぶんハードだし、まだ暑かったり涼しかったりだし」

「大丈夫だよ。仁科くんの活躍、ずっと観たかったんだ」

小鳥遊はそう言って、鞄の中からリボンで結んだ透明の袋を取り出した。

「上手くできたと思うんだ、ミサンガ」

小鳥遊は少しはにかみながら俺の手の上に、袋を乗せた。

赤、白、ライトグリーンの糸で編み込んだミサンガは、とても鮮やかだ。

小鳥遊が丁寧に編んだんだなと思うと、混みあげてくるものがあった。

「知ってる?」
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