ポケットにあの日をしまって
俺のポジションはミットフィルダーで、今日は攻めに赴きをおくよう指示が出ていた。

相手チームのミットフィルダーにマークされ、前半中盤まで思うように動けずにいた。

観覧席からの応援に支えられ、がむしゃらにマークを交わした。

前半終盤、相手チームに2点取られ、休憩を迎えた。

小鳥遊から結んでもらったミサンガをほどけないよう、ギュッと結び直した。

「仁科、カウンターに回われ。後半3点、絶対取るぞ」

サイドフィルダーのキャプテンが俺の肩を叩いて、渇を入れた。

勝って小鳥遊と付き合うんだ、負けてたまるかーーと、観覧席の小鳥遊を見る。

試合が始まる直前には、遠慮がちに応援団から距離をおいていた小鳥遊が、応援団の女子たちの側に居た。

小鳥遊はサッカーのルールもほとんど知らないはずだ。

ポジションがどうとか以前に、どこにパスを回せばパスが有効に通るかとかさえも理解していないだろう。
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