ポケットにあの日をしまって

茉莉side 写真撮ろうよ

サッカーの試合、応援は初めてだった。

校舎の窓から仁科くんがグランドで部活をしている様子を眺めることはあった。

放課後、グランドの金網越しの仁科くんを観たこともあった。

仁科くはいつも、たくさんの女子から応援されていた。

近寄りがたいーーそう感じていた。

1年生の高体連以降は、仁科くんと話しているだけで、ひそひそ話をされたり、ジロジロみられたりして気まずかった。

試験の日程が出て部活が試験休みになると、一緒に帰ることもあったけれど、いつも女子の視線が怖かった。

病院の待合室で時々会って、声をかけてくれる仁科くんの明るい笑顔が好きだった。

わたしにだけ向けてくれる笑顔だといいなと思った。

初めて観るサッカーの試合。

白熱する闘いをいつの間にか、のめり込み身を乗り出して観戦していた。

日焼けするのがイヤで、日傘をさして応援していたけれど、とうでもよくなっていた。
< 42 / 46 >

この作品をシェア

pagetop