さようなら、初恋
沙羅との初対面は良く覚えている。


「女性には優しく」をモットーに生きているジェントルマン気質な父さんに、くれぐれも粗相のないようきつく言い付けられていたのだ。(少し生意気で乱暴な素行があった俺に圧を掛けていた)


けれど、父さんの心配は杞憂に終わり、母さんの後ろからちょこんと顔を出し、
「こんにちは、柊くん。沙羅です」と可愛らしく挨拶をした小柄な女の子に、俺の庇護欲は猛烈に掻き立てられた。



その当時、7歳とか8歳とかだったっていうのに、何が庇護欲だ。って馬鹿にする人もいるかもしれない。


だけど、沙羅は同じクラスにいるようなうるさい女子とは違う気がした。


見るからに儚くて、大人しそうで、透けて消えてしまいそうな透明感があった。


今思えば、一目惚れってやつだった。


実際に沙羅は良い子で、仲良くなるのに時間は掛からなかった。


一緒に公園で遊んだり、宿題をしたり、ゲームをしたり、おままごとってやつにも付き合ったっけ。


俺が沙羅を一生守るんだ、って思っていたし、父さんにもそう宣言していた。


そうしたら、「頼もしいな。」って言ってくれていたんだ。


それがどんなに困難な事かも知らずに。


父さん、父さんは子どもの戯れ言だと思っていたのだろうけど、俺は本気だったよ。
本気で沙羅を一生守るつもりだったし、沙羅の隣に一生居るつもりだった。

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