さようなら、初恋
それからの俺は沙羅にべったりだった。登下校も一緒。お昼も一緒。


家に帰ってからも、一緒にDVDを観たり、ゲームをしたり沙羅を独占状態。


仲の良い奴らにも「柊、シスコンかよ」なんてからかわれたりしたけれど、「ほっとけ!」って一蹴していた。沙羅も俺の隣でにこにこしてくれていたし、今思い返せばこの頃が一番幸せだったな。



俺と沙羅の関係に暗雲が立ち込めてきたのは、俺たちが16歳の、まだ高校生の頃だった。


父さんが経営している会社が傾き始めた。


そこに援助を申し出てくれたのが、父さんの古くからの友人の永井さんで、その息子の誠也さんが後の沙羅の結婚相手になるだなんて、この時の俺はまだ知らなかった。



沙羅に異変を感じたのは高校3年になった位かな。あまり頻繁に外出をしないタイプなのに、月に1度は妙にオシャレをしてどこかに出掛けるようになった。「どこに出掛けるの?」と聞いてもうまくはぐらかされる。けど、沙羅には沙羅の世界があるし、しつこく問い詰めて沙羅に嫌われる方が怖かった。
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