2番ではダメですか?~腹黒御曹司は恋も仕事もトップじゃなきゃ満足しない~
「おまたせー」

膠着した空気をぶち壊すかのように、妙にのんきな声が響いてくる。
先程の女性がカップののったトレイを運んできた。

「コーヒーでよかったかしら?」

「はい」

差し出されたカップを受け取る。
大人はコーヒーだが、響希ちゃんはジュースのようだった。
ストローの刺さったカップをもらい、彼女は部長の膝の上で大人しく、ジュースを飲みだした。

「改めて紹介するな。
こちら、兄の奥さんの杏華(きょうか)さん」

「はじめましてー」

ふわふわうふふと杏華さんが笑う。
それは、とても可愛らしくて、女性の私でもぽーっとなった。

「義姉さん、こちら俺の部下……婚約者の、紀藤明日美さん」

「は、はじめまして……!」

紹介されて我に返り、慌てて頭を下げる。

「こちらが例の、明日美さんね……!」

紹介を受けて杏華さんの目がキラキラと輝く。

「いろいろお話はうかがっているわ」

「ん、んんっ。
義姉さん」

これ以上話をされないようにか、咳払いをして部長は話を遮った。

「あらあら、うふふ」

それに対して杏華さんは、なぜか楽しそうだ。

「今日はよろしくねー。
コーヒー飲んだら早速、始めちゃいましょ?」

「ハイ……?」

悪戯っぽく杏華さんは笑っているが、なにをいったい始めるんですかね……?
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