2番ではダメですか?~腹黒御曹司は恋も仕事もトップじゃなきゃ満足しない~
「そういえば最近、男性社員が妙に優しくしてくれるんですが、なんでなんでしょう?」

前は重いものを運んでいていてもスルーだったのに、最近はすぐに手を貸してくれる。
いや、別に今までだって頼めばやってくれたので問題はなかったが。
でも今は頼まなくてもやってくれるので、謎だ。

「……はぁーっ」

なぜか大きなため息をつき、部長が箸を置く。

「自覚ないのか?
それは明日美が、綺麗になったから、だ」

「……ハイ?」

説明されたところでやはりわからなくて、首が斜めに傾く。
確かに杏華さんの手ほどきのあとはメイクも上手くなったけれど、それくらいで?

「男ってそれくらい、けっこうチョロいの。
だから明日美も、警戒しろ」

そーかー、男の人って美人に弱いんだ。
まあ、女性だってイケメンに弱いからどっちもどっちだよね。
それにしても箸で人を指すのは行儀が悪くないですか?

「はぁ。
じゃあ、気をつけます……」

まだちょっと、納得してないけれど。

「うん。
というか明日美、油断しすぎ。
アイツも、アイツも明日美を狙ってるだろーが」

「へっ?」

部長が名前を出したのは、最近ちょいちょい社食でごはん食べていたら同席してくる人と、ときどきお菓子をくれる人だった。
偶然にしては頻度が高いなと思っていたし、内緒だよって言われるのが謎だったが、そうだったのか。
それにしても。

軽く怒ったまま食事を続けている部長をちらり。
もしかして、ヤキモチ妬いてくれている?
だったらいいな。

自分の気持ちを隠したまま、部長との生活を続ける。
今は、これでいいんだと思う。
いつか、聞いてくれるって言っていたし。
そう、思っていたんだけれど――。
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