2番ではダメですか?~腹黒御曹司は恋も仕事もトップじゃなきゃ満足しない~
「他社に情報が漏れているらしい」
新商品リリース直前になって、その噂が流れてきた。
私が企画したご当地クリームソーダとそっくりな商品を、競合他社が開発中だというのだ。
それだけでもどうなっているのかわからないのに、さらに。
「情報を流したのは企画したヤツらしい」
そんな噂まで流れだす。
当然、上役たちに呼ばれて事情を聞く……というよりも尋問された。
きっと、査問会というのはああいう感じなんだと思う。
上役たちに囲まれて、休みなく質問攻めにされたら「自分がやりました」
って言いそうになった。
でも、やっていないことを認めるのは腹立たしいから、耐えたけれど。
「大丈夫か」
家に帰ったら富士野部長が、慰めるようにぎゅっと私を抱き締めてくれた。
「大丈夫ですよ。
だって私は、やってないんですから」
部長の腕の中は温かくて泣きそうになったが、必死に耐えた。
泣いたら、弱くなる。
この先、戦えなくなる。
「わかってる。
俺が犯人を見つけてやる」
「……はい」
大丈夫、私には富士野部長がいるから大丈夫。
絶対に、負けないんだ。
向こうに発表される前にこちらが発表する。
急ピッチで準備が進んでいく。
けれど、私が発案者だというのに、この件からは外された。
会社はまだ私を疑っているようで、憂鬱になった。
それだけならまだしも、さらに。
――私は命令されてやっただけで、黒幕は富士野部長だという噂が流れだした。