2番ではダメですか?~腹黒御曹司は恋も仕事もトップじゃなきゃ満足しない~
「あら、偶然ね!」

そんな空気を打ち砕くかのごとく明るい声をかけられ、顔を上げる。
そこには花恋さんが立っていた。
いいともなんとも言っていないのに、彼女が相席してくる。

「なんか大変みたいね」

私と同じフラッペのストローを咥え、彼女はニタニタ笑っている。
それを見て、すべてを悟った。

「全部あなたの仕業ですか」

「そう」

悪びれることなく答え、花恋さんはまたフラッペを飲んだ。

――きっと、まだ諦めずに次の手を考えている。

部長はそう言っていたが、半信半疑だった。
まさか、本当だったなんて。

「なにが目的ですか。
……って、私の婚約破棄ですよね」

「わかってるならさっさとして」

じっと目を見据えたが、彼女はしれっと目を逸らした。

「ひとつおうかがいしますが。
どうしてそこまで富士野部長に執着するんですか」

部長からは聞いたが、あれは彼の推測でしかない。
もし、本気で彼女が彼を愛しているというのなら、そのときはライバルとして正々堂々渡り合う。
けれど、違うならば。

「準一朗が私の夫にふさわしいからよ。
この私と並んで遜色ないのは準一朗しかいない。
これ以上の理由なんてないわ」

小馬鹿にしたように花恋さんがはぁっと小さくため息を落とす。
それに、カチンときた。

「……富士野部長の見た目が目的ですか」

私から出た声は、細かく震えている。

「そうよ。
あと、地位。
あーあ、早くあんな三流会社、辞めてくれないかしら?」

花恋さんは全然、部長のことがわかっていない。
部長は今の仕事が楽しくて、野望を持ってやっているのだ。
……恋すら、しないほどに。
なのに、奪おうなんって絶対に許さない。
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