2番ではダメですか?~腹黒御曹司は恋も仕事もトップじゃなきゃ満足しない~
「いい加減にそのうるさい口を塞がないと、……キス、するぞ?」

腰を少し屈めて顔を近づけ、むにっとその手で私の頬を潰してくる。
本気でキスされそうな気がして、心理的に一歩後ろに下がっていた。

「……黙ります」

「わかったらなら、いい」

私から手を離し、再び歩きだした彼を追う。
こんなことをして彼になにか得があるんだろうか。
私にはさっぱりわからない。

そのあと、同じように何軒かのお店をはしごさせられた。
とにかく、お金使いが荒い。
でもそれが慣れていないというよりも板に付いていて、いつもこんなふうに買い物をしているんだなと感じさせた。
つくづく、部長の正体が謎になってくる。

夕食は食べて帰ろうと連れてこられたのは、高級ホテルの鉄板焼きのお店だった。
前菜のあとに出てきた、クリームソース添えのサーモングリルは驚くほど美味しい。

「富士野部長って何者なんですか……?」

あの家だって、あの車だって。
あんな買い物だって二流飲料メーカーの部長にはふさわしくない。

「ん?
FUJINO(フジノ)』って知ってるか?」

部長は車だから、ノンアルコールワインを傾けている。

「そりゃ、まあ」
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