2番ではダメですか?~腹黒御曹司は恋も仕事もトップじゃなきゃ満足しない~
ひょんなことから富士野部長との同棲生活が始まったが、仕事はいつもどおりだった。

「これ。
また品証部に無断でベタ付け、しましたね」

私と同期の男性社員を呼び、富士野部長の注意が始まる。
ちなみに品証部は品質保証部、ベタ付けとは商品に付いてくるおまけのことだ。

「でも、ある程度は営業部裁量が許されてますし」

注意を受けているというのに、男性社員は完全にふて腐れていた。

「品証部を通せばこんなマスコットシールではなく、保冷バッグが付けられましたよね?
それでもっと大々的にキャンペーンが打てたはずです」

「そう、です、ね……」

最初は食い気味に反論していた彼も、部長のもっともな指摘で次第に落ち込んでいく。

「でも、こうやって切り込んでいく姿勢はいいと思います。
けれど、その場の勢いに流されずに、一度立ち止まって最大限の効果を上げるにはどうしたらいいか、考えるようにしましょう」

にっこりと部長が、彼に笑いかける。

「はい!
これから気をつけるようにします!」

勢いよく頭を下げ、こちらを振り返った彼はすっきりとした顔をしてた。
これが、富士野マジックなのだ。
注意はする、けれどそれだけじゃなくどこか絶対に褒める。
しかも柔らかい物言いで、最後ににっこり笑顔とくれば、反発していた人も落ちる。

――しかし。

……家とは別人、だよね。

黒縁ハーフリムの部長は人の話、聞いてくれないし。
同じ人だとは思えない。
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