2番ではダメですか?~腹黒御曹司は恋も仕事もトップじゃなきゃ満足しない~
仕事が終わり、家に帰ったら大量の本が目の前に積まれた。

「これ全部、資格を取れ」

黒縁ハーフリムの眼鏡に変えた富士野部長が、眩しいばかりに白い歯を覗かせて笑う。
それはとても爽やかだったが、私には胡散臭く見えた。

「全部……ですか?」

一冊ずつ表紙を確認していく。
表計算、ワープロ、プレゼンソフトの検定は仕事で必要だからわかる。
TOEICは将来的な海外展開も会社は目標にしているだけに、あればいいかもしれない。
でも、ビジネス実務法務検定って?
行政書士とか必要?
この人はいったい、私をなににしたいんだろう。

「そう、全部。
一回で受かれよ?」

「うっ」

これを全部受験して、さらに一回で受かるなんて大変だ。
でもまあ、仕事レベルが上がるのはいいことなので従おう。

私は勉強に時間を当てろと、家事は部長がしてくれるらしい。

「まあ、家政婦雇ってるからそんなにすることないけどな」

テーブルに並べられた料理の半分は、家政婦さんの作り置きだそうだ。
あとの、チーズののった牛肉のポン酢炒めと、ほうれん草とコーンの炒め物は部長のお手製だ。

「へー、そうなんですね」

家政婦さんを雇っているなんて、なんか住む世界が違うっていうか。
ここ数日で急に、部長が遠くなった気がする。

部長の作った料理は悔しいが、私が作るよりも美味しかった。
この人、仕事もできて料理もできるなんて、どれだけハイスペックなんだ。
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