2番ではダメですか?~腹黒御曹司は恋も仕事もトップじゃなきゃ満足しない~
とっかえひっかえ、店の服全部着せられているんじゃないかって勢いで試着させられる。

「このラックのは全部買います。
ここに送ってください」

服を着替えて出てきたら、部長は精算していた。

「その、富士野部長。
こんなに服をまた買っていただくわけにはいきません」

店を出てすぐに、彼に抗議する。

「俺が買いたいから買うんだから、問題ないだろ」

ぷいっと視線を逸らし、部長は目もあわせてくれない。

「問題大ありです。
前に投資だと仰っていましたが、私のなにに投資しているのかわかりません」

意味もなく、こんなに服を買ってもらうわけにはいかない。
それでなくても今、食費なんか全部見てもらっている。
いくら部長がお金持ちだからって、理由のないプレゼントなんて受け取れるわけがない。

「んー、将来性?
紀藤は最高の女になるんだろ?
それに投資している」

少し悩んだあと、部長は私の顔をのぞき込んでにぱっと笑った。

「はぁ……」

私が部長の期待どおりの女性になれたとして。
それで彼に、なんの得があるんだろうか。
お嫁さん候補……は、ないか。
だとしたら、セレブのおじさんに売るとか?
いやいや、それこそない。

「私が最高の女性になったら、富士野部長はどうするんですか?」

「んー、そうだな。
いい女だろってみんなに自慢する」

「……そうですか」

自慢してどうするんだろう。
部長の考えはいつもさっぱりわからない。
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