2番ではダメですか?~腹黒御曹司は恋も仕事もトップじゃなきゃ満足しない~
アウトレットでのお買い物でお腹に余裕もでき、少し早めの夕食で鰻屋に連れてきてくれた。

「うな重ってやっぱり、鰻があってこそですよね」

個室で、近くで獲れる国産鰻をいただく。
鰻は肉厚だがふわふわ柔らかく、最高だった。

「なに当たり前のこと言ってるんだ?
鰻がなかったらうな重じゃないだろうが」

しみじみと鰻を噛みしめる私に、なに莫迦なことを言ってるんだって感じで部長が言ってくる。

「あー……。
このあいだの土用の丑の日、どーしても鰻が食べたくなったんですがお金なくて、ご飯に鰻のタレだけかけたのと、松茸のお吸い物で済ませたんですよねー。
あれはあれで美味しかったですが」

「お前、鰻が食べられないほど、貧乏なのか?」

私の発言で、大きな口を開けて鰻を頬張ろうとしていた部長が止まる。

「あ、いや、別に、そこまで貧乏なわけじゃないですよ。
会社からはしっかり、お給料もらっていますし。
ただ、本につぎ込んだのとお給料日直前だったので、お財布の中身がすっからかんだっただけで」

笑って、理由を説明する。
私の趣味は読書で、恋愛小説からビジネス書まで興味が湧いたものはなんでも読む。
さすがに最近は置き場に困って電子書籍に切り替えたので、部長の家でも勉強の息抜きにタブレットで楽しんでいた。

「ふーん。
本ってなにを読んでるんだ?
まんがか?」

心配がなくなったからか、また食べながら部長が聞いてくる。

「そうですね、まんがも小説も読みます。
最近読んだのは、映画化されたあの経済小説ですね」

「あれか。
俺も読んだ。
映画は観たか?」

「それが、都合があわなくて、見に行けないうちに終わってしまって」

「そうか。
なら、今度家で一緒に観よう」

嬉しそうに部長が頷く。
彼が、一緒の本を読んでいるなんて思わなかった。
経済小説なのでビジネスマンの彼ならその可能性もあるが、あれはどちらかというとエンタメ色が強いのだ。
もしかしたら本の趣味があうのかも。
今度、どんな本を読んでいるのか聞いてみようかな。
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