2番ではダメですか?~腹黒御曹司は恋も仕事もトップじゃなきゃ満足しない~
「大丈夫か?」

同じように目の前にしゃがんだ部長が、私の手を取る。
ぷっくりと血の膨らんだ指先を彼は――口に含んだ。

「えっ、あっ」

眼鏡の奥で目を伏せ、部長が私の指を咥えている。
意外と、レンズに当たりそうなほど睫が長い。
髭なんか生えないんじゃないかというくらい、肌はすべすべだ。
どくんどくんと指先の脈動が自己主張を繰り返す。
それは血液に乗って全身を巡っていった。
おかげで、胸が苦しい。
呼吸が短いものへと変わっていった。

「ん。
これで血、止まったかな」

ようやく、部長が自分の口から私の指を離す。
それはほんの数分だったけれど、私にとっては永遠に思えるほど長かった。

「あっ、……はい」

身体中が熱くてまともに部長の顔を見られない。

「俺が片付けとくから、紀藤はもう向こう行って座ってろ」

「あっ、はい。
……すみません、でした」
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