2番ではダメですか?~腹黒御曹司は恋も仕事もトップじゃなきゃ満足しない~
なんだかんだあって時間が経ってしまい、少し冷めたピザとパスタで夕食を取る。

「そういや富士野部長、いくら結婚を断るためとはいえ、私を結婚相手に仕立て上げるのはどうかと思います」

さきほど部長は彼女に私と結婚するからお前とは結婚でいるわけがないとか言っていたが、あれはない。

「んー?
そうか?」

「はい。
私ごときに負けたとなると、あの人も納得しないですよ」

うんうん、相手が姉くらいの女性ならあの人も諦めたかもしれないが、万年二番手のフツーな私なんて認められるわけがない。

「あのな」

はぁっと呆れたようにため息をつき、部長は手にしていたグラスをテーブルに置いた。

「その、〝私ごとき〟と自分を卑下するの、どうにかしろ。
さっきの俺の言葉に嘘偽りはない。
間違いなくあんな女なんかより、紀藤のほうがいい女、だ」

「あいたっ!」

愉しそうに笑いながらデコピンされて、額がヒリヒリと痛む。

「そう、ですかね……?」

部長はそう言うが、私にはそんな自信はまったくない。
それとも、これからついていくのかな……?

「俺が言うんだから間違いないの」

グラスにのったワインを、部長がくいっと一気に飲み干す。
耳が真っ赤になっているのは、もう酔っているからなんだろうか。

「そうだ。
いっそ、紀藤が俺と結婚すればいい」

「……は?」

さもいい考えなように部長が言う。
けれど私はなにを言っているのか少しも理解できず、ピザを持ち上げたまま彼の顔を凝視していた。
おかげで、重みに耐えられなくて、先端にのっていたエビがぽろりと落ちた。

「ええーっと。
……それ、本気で言ってます?」

なにしろ部長は、あの大企業の御曹司なのだ。
その結婚相手がこんな一般庶民であっていいわけがない。
いや、身分差が……というのがいまどき時代錯誤だったとしても、部長が私を好きだなんて絶対に、ない。
ならば結婚なんてありえないのだ。

「なんだ、紀藤は俺と結婚するのが嫌なのか」
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