2番ではダメですか?~腹黒御曹司は恋も仕事もトップじゃなきゃ満足しない~
「なんだ、先に食べなかったのか」

飲み物の準備を済ませたところで、部長が着替えてダイニングへ来た。

「少しくらい待ちますよ」

いまさら五分くらい、遅くなったところで別にかまわない。
笑って、椅子に座る。
部長もテーブルに着いて、一緒に食事をした。

「その、富士野部長?
さっきの、〝惚れ直した〟って、どういう意味ですか?」

はっきりさせておかなければ、今日は眠れそうにない。

「んー、内緒」

唇に人差し指を当て、悪戯っぽく部長は片目をつぶった。

「内緒って、ズルいです」

少しだけ頬を膨らませ、ふて腐れてみせる。

「でも、今日の明日美は惚れるくらい、格好よかったのは間違いないからな」

眩しいものでも見るかのように、眼鏡の向こうで部長の目が細くなった。
こんなに褒められて、居心地が悪い。
でもこれは嫌なんかじゃなくて、嬉しくて落ち着かないからだ。

――しかし。

「……やっぱり、ズルいです」

こんなに私の心を掻き乱しておいて、自分の気持ちは内緒にするところ。

< 91 / 149 >

この作品をシェア

pagetop