2番ではダメですか?~腹黒御曹司は恋も仕事もトップじゃなきゃ満足しない~
「富士野部長」

「ん?」

彼の袖を掴み、真っ直ぐに顔を見上げる。

「私は、富士野部長が……」

けれど、その先は続けられなかった。
私の言葉を封じるように、部長の唇が重なったから。
親指で顎を押して強引に口を開かせ、ぬるりと彼が侵入してくる。
拒否しようと胸を押したが、びくともしない。
それどころか後ろ頭に回った手が、私を引き寄せた。

「……ん……んん……」

逃げ回ってもすぐに彼に捕まり、翻弄される。
……これは誤魔化そうとしているだけ。
わかっているのに、彼に溺れていった。

「……」

唇が離れ、無言で見つめあう。

「その先は今は聞かない。
お前も言うな」

秘密だと部長の人差し指が私の唇を押さえる。

「……〝今は〟ってことは、いつか言っていいんですか」

ならば、今は辛抱して待つ。
でも、違うなら……。

「……そう、だな。
いつか、そのときが来たら、な」

彼が淋しそうに笑い、心臓を鷲掴みにされたかのように苦しくなった。

「なら、そのときまで待ちます」

「ん」

私の頭をぽんぽんした部長は、いつもどおりに戻っているように見えた。
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