甘い災厄
それから。
なんだかんだで、起きあがったまつりは、愛らしいペットにおはようのちゅーを要求してみた。
のだが、無敵のご主人様命令は効かず、すごくうざったそうな目で「……ご主人様、朝からやめてください」と拒否された。
……ううむ。
朝からじゃないならいいのかな。夏々都はなついているのか、いまいちわからない。何よりも、敬意が伝わらないと思う。
思っていたら、伝わったらしく、しょうがないなこの甘えんぼさんめ、と階段までしばらく抱っこしてくれた。
そのままちょこんと廊下に置かれたわけだが、嬉しくてにゃはーっとにやけているうちに、彼は戸を閉めてしまったので、着替えに邪魔だからさりげなく部屋から追い出されただけかもしれない。
でもいいのだ。
近頃は、彼も、少しは他人に心を許している気がする。その証拠が、この小生意気な態度なら、健やかなる成長が喜ばしい。
ほぼ無表情だった彼が、最近は、少しだけ照れたり、笑ったりする。
過去は、乗りこえられないが、塗り重ねることくらいは、できたのならいいなと思う。
まつりも、他人を支配したいと思うほうだが、しかし、暴力や強い言葉による理不尽な洗脳は、品がなく、美しくないと思うので好まない。
それに、その呪縛が歪めるものはあまりにも大きい。見えない場所に後遺症を残すのだ。
例えば自己を守るために脳の発達を一部阻害すると言われている。感情を鈍らせ、正しい判断力を奪い、認識を歪めるという。