甘い災厄
放って置けないうちに、彼が無表情ながら、まつりには嬉しそうにするようになって────
少しずつ、笑ってくれようとしているのだと思うと、嬉しかった。
そして今もこうして、一緒に過ごしている。
特に無理に努めて愛そうとはしなかったことが、彼には信用が高かったようだ。
ゆっくりでいい。彼が失ってきたものをゆっくりと、取り戻すまで、まつりは責任を持つつもりだ。
「……くしゅん」
しかし、廊下は寒いな。まつりは冷え性なのだ。着ていた上着は、布団用に薄めだったから、ちょっと寒い。
夏々都のばか。