甘い災厄
だからまつりは言う。
「二人で、暮らそう? 対等になるんだよ、だから、結────」
はっと、意識を戻す。
夏々都は、寝ていた。
どのくらい時間が経っただろう。彼は、いつのまにか、まつりに寄りかかり、ぎゅうっっと抱き付いてきている。
無邪気な、寝顔。
か、可愛い……!
きゅうんと、胸の奥が熱くなる。
彼は無意識で知らないらしいが、結構甘えん坊だし、寝ているときには、実は彼の方がよくまつりに甘えてくる。
行かないで、とでも、言っているみたいに、まつりをしっかり抱き締めている彼を、まつりはよしよしと撫でてみる。起きているときは、なかなか撫でさせてもらえないのだ。さらさらと、綺麗な黒髪が手に馴染む。
「ななと、着いたらご飯だよ。あ、でも、ホテルにチェックインがあったっけ……んで、その後も、いっぱい遊べるよ」
早起きのせいもあるだろうが、特に最近はいろいろ、事件や心配ごとがあって、疲れたのだろう。彼は、かなり熟睡中だった。
そういえば彼はまだ、気に病んでいるのかもしれない。自分に関わった人の末路を。
彼は忘れられない。