甘い災厄
「敏感だってことですね」
「なんで嬉しそうなんだよ。過剰ってことは、基準を越える刺激を受け取れてないんだから、結局苦痛だと言ってるんだけど」
「んー、わかったー、じゃあ、触らない」
「極端だな。まあいいけど……」
「やっぱりちょっとぎゅっとするくらいならいいよね」
「早い、気持ちの切り変わりが早い! まあいいけど」
「どこからがキャパオーバー?」
「そっ、それは、教えない……! 嫌だって言ったらやめてくれ」
「ふうん、わかった。でも、解消すればいいんじゃないかな? 人間の身体の構造は一応一通り勉強したし──」
「う、うるさい、だめだ、そんなの……恋人でも、結婚してるわけでもないのに」
「すればいいのでは?」
「……お前なぁ」
「政略結婚とか、まつりの周りの人じゃ当たり前だったし、恋愛感情がなくても恋人になるのも当たり前だし、別に好きじゃなくても結婚して家庭を持つのは当たり前だったしさ──まつりはだから、別に、そこまでそれ自体には違和感がないよ? 幸せな二人が幸せに惹かれあって、なんてのばかりが当たり前とは思わない。子どもの頃読んだお話のなかじゃ、そんなのばっかりだけど、世間は、もっと複雑だよねー。世知辛いっていうか」
「お前は、そう、なんだな。でも、いやだそんなの。きっかけとか聞かれたら絶対言えない」
「ふうん? いやなのは、そこなんだ……」