甘い災厄
ま、いいや。
まつりは気持ちを切り替えて、本日の議題、じゃなくて、一番言いたかったことを持ち出す。
「とにかく、どこに行くかリストを作りました!」
放課後までに、かかる時間や、経費、そして場所を悩んで選出したリストの紙を夏々都に見せる。
夏々都は、椅子から降りて、まつりの横に座ると、紙を見つめた。
「ふうん、なるほど」
「あいてなかった場合も変更ルートを作りました!」
「そっか、お前こういうの上手いよな。計画とかさ」
夏々都は感心する。
まつりはちょっと誇らしくなった。えっへん。
もっと褒めろ。
「いや、計画は苦手だよー。だいたい思い通りにいかないから、普段は立てないんだけどねー」
「それは、お前が気まぐれすぎるからでは……」
言われてみれば、そうかもしれなかった。よしよしと頭を撫でられながら思う。
◆◆
そうして訪れた当日。
「まつり、おはよう」
「うにゃ……」
「こら起きろー」
眠い……まつりは、昨晩楽しみで眠れなかった。ので、今眠りを欲していた。
「バスの時間までに支度をしないと」
おがくずに埋まるハムスターの如く、布団のなかにもそもそ潜って光を遮るが(なかなか目を閉じられないくせに、一度寝てしまうと、むしろこうである)
、夏々都が隣から布団を引いてまつりを起こそうとする。
「うう、眠い……」
起きなきゃ、とは思う。ほんとほんと。
思うんだよね。思うのはね。
でもまだ時間はあるでしょ? 余裕をもって見積もってるだけだからあるんでしょ? という、セコい計算がこういうときばかり頭を過るのは仕方がないんじゃないだろうか。
身体は、持ち主を少しでも休ませようと、あらゆる計算をし始める。
……とりあえず、適当に話して、起きられるようになるまでの時間を稼ごう。
「あー昨日みたいに、いやらしいことをされたいんだな? 朝から元気だなあ、ちょっと、待ってね。眠い……もう、ちょっと」
「なに言ってるかわかんねえよ。昨日みたいにってお前、結局放棄して途中で寝ただろうが、なんでまだ眠いんだ」
夏々都が呆れたようにため息をついた。そうだっけ、よくわからない。
「んー、それから布団に入って、本当に10分くらいは寝てたんだよ。でも、あのあとすぐに夢を見てテンションが上がったから起きてしまって、夏々都の呑気な寝顔を眺めて撮影したり、夏々都がまだ寝ているうちにパジャマをひらひらしたやつに着替えさせてみようか考えてみたり、やることがいっぱいあった」
「ぼくがらみの嫌がらせを無くせば寝る時間あるだろ」