【完結】捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す2〜従騎士になったら王子殿下がめちゃくちゃ甘いんですが?
「アクア、行くよ!」
「ブフッ!」
アクアは徐々にスピードを上げていくけれど、あまり速くなり過ぎるとタイミングが合わなくなる。微妙に速度を鬯しながら、右手のランスを左斜め下に構える。
(……来た!)
塀の向こう側から、プレートメイルを着た対戦相手の姿が見えた。身長は当然わたしよりも高く、体格もいい。
ただ、馬の扱いにクセがありそうだ。頭の中で冷静に分析をする。
勝負は、一瞬で決まる。
体重がある相手ならば、落馬させるよりも相手のランスを砕いた方が早そうだけど。
素早く作戦を決めたわたしは、鎧の右脇下にある金具、ランスレストの具合を再度確認する。
ランスレストはランスが衝突した時に、後ろにずれて攻撃力が無くなることを防ぐ大切な部品。
(よし、万全だ)
左手の盾もOK。
あと、数秒。
心臓が、かつてないほど高鳴る。
兜で視界が制限されているのに、視界はかつてないほどクリアだ。
すれ違う数秒前、相手がランスを水平に構えた。
(……今だ!)
左斜め下に構えたランスを上げ、下から相手のランスを跳ね上げる。相手のランスの下に沿ってランスを滑らせ、そのまましっかり握ったランスで相手の顎の下を狙う。
馬の体重も乗ったランスチャージ(突撃)。
けど、やはり相手も簡単には落馬しなかった。