【完結】捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す2〜従騎士になったら王子殿下がめちゃくちゃ甘いんですが?
(勝負は、一瞬で決まる!)
ランスを握る手に、力が籠もる。
どんな些細な動きも見逃せない。最大限の注意を払いつつ、わたしも作戦を決めた。
フランクスが望むのは、正々堂々とした騎士らしい清廉な勝負。卑怯な手段は使わず、一騎打ちに相応しいもの。
(ならば、フランクス。お互いランスを狙うんだ)
フランクスの先ほどの動作は、デモンストレーション。次のターンで勝負が彼の望みだ。以心伝心。この数年……騎士見習いになってからの1年、彼とは良き親友として互いに切磋琢磨してきた。だからこそ、その考えが理解できる。
だからわたしも正々堂々とフランクスのランスを狙い、勝利を目指すんだ。
(さぁ、フランクス。あなたの全力でわたしを狙うんだ。わたしはそのうえで勝たせてもらう!)
親友だからこそ、わたしは全力で応える。
アクアの俊足で、勝負の時間は速く訪れる。
ランスを正面に構えたわたしは、すれ違う数秒前からランスを構える。
ドキンドキンと心臓が高鳴り、気分が高揚する。その一方で、冷静な自分もいた。
勝負時がーー見えた。
(……今だ!)
自分自身の直感を信じたタイミングで、ランスチャージ(突撃)を繰り出す。どんな時よりも、速く正確に!
そして……
手応え、あり。
フランクスがランスを動かしたほんの一瞬の差で、彼のランスが折れる。
……勝負の結果を告げる笛が鳴り響き、エストアール家の紋章旗が掲げられた。