【完結】捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す2〜従騎士になったら王子殿下がめちゃくちゃ甘いんですが?
大切な愛馬となるアクアが生まれた日は、見事な五月晴れだった。
生まれてすぐすっくと立ち上がったアクアは……出産を見守っていたわたしを小馬鹿にした顔をしてからかってきたっけ。普通の仔馬は少し時間がかかるものなのに、アクアはすぐ走る事もできたんだ……わたしへ舌を出しながらね。
お陰で追いかけっこをして、捕まえた瞬間にこの仔を騎馬にしようと決めたんだ。お父様の説得は骨が折れたけど、今ではやっぱりわたしの愛馬はアクアしか居ないって思う。
騎士になるならば、大切なパートナーである騎馬とは一心同体。お互いに信頼しあい強い絆で結ばれていなければならない。
わたしのアクアは、世界中どこを探したっていない、最高のパートナーだ。
この馬上槍試合だって、アクアがいなければ優勝はできなかった。
……そして。
壇上に上がる最中、そのうえに立つ人を見る。
騎士として王太子としての正装をした、アスター王子。
わたしを騎士として全力で見守り育ててくださってきたお方。
上司であり、先輩であり、仲間であり、そして婚約者であり……生涯をともにする大切なひと。
わたしが、初めて……そして。一番好きになったひとだ。
なにも知らなかったわたしに、いろんなことを教えてくださった。
彼がいたから、わたしはわたしのままでいられる。
女性でも、騎士を目指していい。そんなメッセージを次の世代の少女たちへ伝えられたことが、一番嬉しかった。