【完結】捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す2〜従騎士になったら王子殿下がめちゃくちゃ甘いんですが?
たくさんのタコがある分厚く節くれだった手。
苦労を知り、努力をしてきた証。
あたたかくて大きな手が、わたしは好きだ。
全身を包みこまれるような安心感が、胸にしみる。
わたしの手も剣だこがあり皮が厚い。
日焼けして肌も荒れているし、戦いでついた傷もある。
でも、わたしは恥ずかしくないし、むしろ誇りに思う。
わたしたちの手は、努力の証だから。
繋いだ手から、彼の優しさや愛情が伝わる。
わたしの想いも伝われ、と願う。
騎士になる。そう願って走ってきた。
そうする中で思わぬ婚約。
最初はただの偽装と思っていたけれども、今はお互いにきちんと想い合っている。
家族とは違う、想い。
あたたかくて、優しくて、安心できて、それなのにドキドキと落ち着かない恥ずかしい気持ち。
ずっと、一緒に過ごすうちに大切に育んできた想い。
このひととならば、一緒に居たい。
一生一緒に、生きていく。
わたしが少しだけ強く手を握ると、アスター王子も軽く握り返してくれる。彼の微笑みだけで、わたしはこんなにも幸せを感じられる。
「さぁ、改めてピッツァを祝いに行くかな」
「はい!」
笑顔で、アスター王子に応じた。
2人手を繋いだまま。
わたしの歩幅に配慮して、ゆっくりとアスター王子が歩き出す。
こうして、ずっと2人で歩いていこう。
なにがあっても、2人の手は離れることはない。
きっと、ずっと。
永遠に。
(終)