佐藤 VS 佐藤
ぼーっとしていたあたしを現実に引き戻したのは、不服としか言いようのない呼び名。
むっとして軽く睨むと、そんなことは1mmも気にしない様子で担任は話し続けた。
「しょうがないから、最初から言う。今度はちゃんと聞いとけよー?」
どうやら、アイツも聞いてなかったらしく、担任はあたしたちを見張るように交互に見ながら話す。
「実は、さっそく今日委員会が入ったんだよ。だから、このあと視聴覚室まで行ってくれ。いいな?」
「はいぃぃ!?」
あたしの幸せな放課後の予定がガラガラと音をたてて崩れていく。
今日は天気いいから、学校の周り散歩しつつ写真撮ろうかと思ってたのに。
アイツと、委員会だなんて。
「じゃあ、よろしくー。担当の先生には、斎藤の代わりに佐藤が行くってことは言ってあるから。」
頼んだぞー、と軽い感じに話を切り上げて、担任はホームルームを終えた。
さっさと挨拶を済ませ、教室を出ていくその後ろ姿を見ながら、あたしは大きくため息をついた。