佐藤 VS 佐藤
「…でさ、何話してたか教えてもらえない、かな…?」
先程の「ふーん」の後、無言になってしまったアイツに、恐る恐る話しかける。
今何を話し合わなければならないのか、結局教えてもらってない。
机に肘をつき、窓の外を眺める後ろ姿は、どこか不機嫌そうなオーラが漂っていて。
…気まずい。
話聞いてなかったあたしが悪いんだけど、議長がチラチラと時計を気にしていることからも、
話し合う時間が残りわずかなのは間違いないから。
「…。」
こちらを向いてくれる素振りは、ない。
仕方なく後ろを向き、隣のクラスの子にでも聞こうと思った頃。
「…来週の、クリーンなんとかで、自分らが担当する場所決めろって。」
アイツの、低い声が聞こえた。
慌ててそちらを見ると、体は窓の外へ向いたままで。
…それでも、返事をしてくれたことに安堵する。
「…ありがと。」
今思えば、斎藤君の代理で嫌々来てるはずなのに、ちゃんと議長の話聞いてたんだ。
ごめん。あたし、もっと ちゃんとしなきゃ駄目だね。
小さく呟いた言葉に、返事はなかったけど。
きっと聞こえてるはずだから。
「どうしよっか?とりあえず、校内ならいい?」
背中に向かって、話しかける。
「……いいんじゃねぇの。」
返ってきた言葉はぶっきらぼうなものだったけど。
心なしか、不機嫌そうな色が薄れた気がした。