佐藤 VS 佐藤

ちなみに『クリーンなんとか』(正式名称は…『クリーン大作戦』だったかな?)というのは、1学期に1度ある行事で、大掃除に似たようなもの。
特別教室やグラウンド、中庭、体育館、食道、屋上などの校内施設に加えて、地域の掃除も行う。
神社とか、河原とか、公園とか。
――つまり、大掃除にボランティア的な要素をプラスしたものなのだ。

自分たちの教室やその前の廊下などを掃除する大掃除とは別なので、各クラスで分担することになる。
ただでさえ、面倒な行事。7月の暑さで校外の場所(特に駐車場とか)担当になると、地獄。



「…はい。じゃあ 時間来たんで、希望取りまーす。」


議長の男の子が大きな声をあげて、ざわざわとしていた室内が少しずつ静かになっていく。
決め方を説明する彼の話を、今度こそは、と一言も聞き洩らさないように頭に入れた。

どうやら、くじで順番を決めて、好きな場所を選んでいくらしい。
…ということは、大きい数字を引けば その時点で間違いなく校外になるだろう。


「くじだって。どうする?」


いつの間にか前に向きなおっていたアイツに問いかける。


「俺、今日くじ運ねぇから。」


ぼそりと言われたその言葉に、妙に納得した。
元はと言えば、彼は『あみだくじ』のせいで此処にいるのだから。


「…じゃあ、あたし行ってくるよ。」




――このとき、あたしは忘れていた。

今朝、アイツが代理委員長に神様を恨んだこと。
なんて運が悪いんだ、と思ったこと。

…もしかしたら、
アイツのくじ運が悪かったんじゃなくて、あたしの運が悪かったのかもしれないね。

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