佐藤 VS 佐藤
結局あの後、議長が注意事項などを説明して 委員会は終了。
「お疲れさまでしたー。」
ぞろぞろと視聴覚室を出る生徒たちに紛れてドアを出て、そのまま階段に向かう。
1段目を上がろうとしたあたしは、突然後ろから引っ張られた。
「…っ」
そんなに強い力ではなかったのに、体が安定していなかったあたしはグラリと よろけて。
やばいと思って目を瞑った瞬間 背中に感じたのは、あたたかくて固いもの。
「…わりぃ。」
小さく呟いたのは、アイツだった。
どうやら、階段を上がろうとしていたあたしの肩を掴んだらしい。
きっと、態勢を崩すとは思っていなかったのだろう。
振り向いて 見上げると、ばつが悪そうな顔をしていた。
「や、あたしこそごめん!重かったでしょ!?」
アイツの香水の香りを感じて、かなり密着していることに気付いたあたしは、慌てて体を離した。
思いっきり体を預けてしまったから、きっと重かったと思う。
「いや、別に。」
返ってきたのはいつも通りの無愛想な言葉だったけど、「重かった」と言われなくて少し安心した。
(アイツなら、言いかねない。)