佐藤 VS 佐藤
「邪魔。」
すがすがしいはずの、朝。
少し早く学校に着いたあたしは、クラスの子と話してたんだけど。
それが、アイツが席に向かう道を塞いでいたらしい。
ちょっとむかついたけど、悪いのはあたし達。
素直に「ごめん」と言って、端によけた。
「はよ。朝から機嫌悪すぎじゃねぇ?」
そう言いながら笑ったのは、さっきまで話していた吉崎渉(ヨシザキワタル)
アイツといつも一緒にいるとは思えないほど、めちゃくちゃイイ子。
背が高くて、笑った顔がかっこよくて、密かに人気があるけれど、他校にいる彼女一筋。
1年の時も同じクラスだったから、今も割と仲がいい。
「朝からうざい女に泣き喚かれたんだよ。」
「どうせお前が悪いんだろ?」
アイツは不機嫌な顔を隠そうともしないで、だるそうに言い、どさっと鞄を置く。
「一度だけって言うから抱いてやったのに、しつこいんだよ。」
…あーあ。ほんと、こんな奴のどこがいいんだろ。
内心呆れつつも、渉に「席戻るね」とだけ告げ、その場から離れた。