佐藤 VS 佐藤


…うわ…、顔、真っ赤。


一瞬焦ったけど、おなかが鳴ったのはあたしじゃなくてアイツだった。



「…パン、いる?」



笑いそうになるのをこらえて尋ねた。

―この学校で(たぶん)2番目にモテる佐藤行成のおなかの音を聞いたことある女の子って、どのぐらいいるんだろう。
(ちなみに1番モテるのは、隣の隣のクラスの松谷桔平だと思う。)



「…いる。」


いつもの低い声は、恥ずかしさを押し殺したようで、それが余計に笑えた。
必死にこらえていたけれど、少しだけ頬が緩むのが自分でもわかった。




「はい。」


お昼に食べなかった焼きそばパンとメロンパンを鞄から取り出す。


「どっちがいい?」


聞いたけど、ホントはどっちを選ぶか知ってる。
…確信があった。



「…。」



無言で掴んだパンは、焼きそばパン。

――昔から、好物だったもんね。

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