佐藤 VS 佐藤
Second round
「おはよー。ほら、席つけー!」
出席簿片手に入ってきた担任が声をかけ、みんなが自分の席へ着く。
「きりーつ…れい…」
週番の声に合わせて立ち上がり、挨拶をした後
チラリと見たアイツの席は、空席。
昨日までなら、いないことを単純に喜ぶことができたと思う。
…でも今は、なんとなく喜べない。
(意味分かんない。何考えてんの、あたし。)
自分でもわからないモヤモヤが胸の中を占めていて、どうにもヤル気が起きなかった。
(よし、寝よう。)
自分の腕に顔をうずめて、寝る体勢をとった瞬間。
「おい、ダブル佐藤―?昨日の委員会の報告頼む。」
どうやら、すっかり気に入ってしまったらしい呼び名(当の本人は気に入らないのだけれど)が聞こえて
あたしの睡眠は阻まれた。
「あれ?佐藤しかいないのか。佐藤どこ行ったんだ。」
「佐藤佐藤って、ややこしいよ!」と笑う声が聞こえて、他の誰かが大きな声をあげる。
「今日まだ来てないよー!」
「アイツ…今月特に遅刻多いな。」
ブツブツと文句を言う担任は、「佐藤れん」と、あたしだけを呼んだ。
「…はーい。」
あぁ…気が重い。