佐藤 VS 佐藤
突然のことに、一瞬でクラスが静まる。
ドアを開けて立っていたのは、アイツ。
「俺がくじ引いたの。悪いな。」
「え…?あ、いや、その…」
『えー?誰がひいたわけ?』
『俺だよ、文句あんのか。』
聞こえてきた言葉を反芻する。
(…なんで?)
――くじひいたの、あたしじゃん。
「ごめん、行成!あたしたちそんなつもりじゃ…」
1人の女の子が、慌てて弁解しながら、チラリと横目であたしを見た。
『くじだったらしいよ』と言った子のほうだ。
『誰がひいたわけ?』と言った子は、アイツの冷たいカオに言葉をなくしたのか、俯いたまま。
どちらも、きつめな顔立ちで、化粧も服装も派手な子たち。
特に、今俯いている子は、アイツのことが好きだと有名だった。
みんなで一緒にお昼ごはん食べてはいるけど、必要以上のことはあんまり喋ったことがない。
――そういう、微妙な関係の子。
「俺じゃないと思ってたなら、アイツだと思ってたわけだろ?」
…?
え、怒ってる?