佐藤 VS 佐藤
「行成、おまえ、いくら朝だって言っても機嫌悪すぎ。
そんなにいじめなくてもいいじゃん。」
なー?と、同意を求めながら ニコリと笑う渉と、目が合った。
「そうだぞー?佐藤。
つーか、おまえ遅刻したんだから、もう少し申し訳なさそうにしてろ。」
渉と担任の言葉に小さく舌打ちしたアイツは、ようやく自分の席へと歩き、乱暴に鞄を下ろす。
そして、『もう話す気はない』とでも言うように、そのまま机の上に伏せた。
静まり返ったままの教室は、酷く居心地が悪くて。
胃のあたりが、ズンと重くなるのを感じた。
「つーか、吉崎。お前も遅刻だろうが。」
「あ、ばれた?」
「当たり前だろ。とっとと席につけ。」
ドア付近で交わされていた渉と担任の会話で、ようやく教室内の空気が和らいでいく。
先程のピリピリとした雰囲気は一転して、みんな笑っていた。
――あたしたち以外は。